夢の果て 第四章(格闘編)

コーチマン

2016年12月10日 19:00

夢の果て 第三章(恵みの雨編)の続きです。

注意:写真は一枚もありませんが、ラストに動画があります。



水中で発生してしまうラインスラッグを取るようにもう一度アワセを入れる。

ゴゴッ、ゴッ、ゴゴッと首を振る相手に、イトウっぽいぞこれ。と思い、さらにラインスラッグを取りつつ追いアワセを追加。


パスッ・・・


まさかのラインだけが戻ってきた。切れた。

先ほど、今日最初のキャストで草に突き刺さったのを外したときにラインが痛んでいたんだろう。

一日に一度あるかないかのチャンスを自らのミスで失った。サイズは60前後だとは思うがほぼ本命と思われる感触。

サイズは関係なく、今年最後になるカヌー釣行の1本だった。獲りたかった。非常に悔しい。


でも悔やんでても何も進まない。都合よく、あれはアメマスだと自分に言い聞かせた。

目当てのポイントはその後何もなく、次の有望ポイントへ移動。ここは今秋の釣行で大きなボイルを目撃している。

同じくカーブの終わりから攻めると15センチのシンキングミノーを流すキーさんに良いアタリ。

大きくロッドが弧を描き、本命かと期待するも、コンディションの良い50オーバーのアメマス。

二人で苦笑いしながら、やっぱりさっき切れたのもアメマスだよ、と冗談を交わす。



次はカーブの丁度中間、ボイルを目撃していた辺りを攻める。使うルアーは先ほど切られたバイブレーション、オレンジイワシ。



釣り場にまったく同じルアーを持っていくことはまず無い僕が、今日の釣りのためにわざわざ買って、昨日ルアーボックスに入れておいた。

今日の攻め方はバイブレーションとザリガニミノー。あくまでも、これにこだわるために用意していた予備。そして、それほど信頼しているルアーだ。


カーブの内側にアンカーを下ろし、外側の流芯から手前のカケアガリを攻める。


ここも良いポイントだけどアメマスもあまり釣れないよね。イトウがいっぱい入ってるからじゃない?


なんて冗談を言いながら、1キャスト目。

また草に引っ掛ける。が、今度はすんなり外れてくれて、底をリフト&フォールで流す・・・何も起きず。


そして2キャスト目。


先ほどより5mほど下流の対岸岸際にダウンクロスでキャスト。ボトムを取り、同じくリフト&フォール。

流芯を過ぎたところで、ラインに掛かったドラッグを取るように少し強めにルアーをリフト。

で、フォール。今思えば何を感じ取ったのかまったく思い出せないが、反射的にアワセを入れていた。


ヌウウ~~~ン・・・


と根掛りのような重さを感じ、例によって水中で発生するラインスラッグを素早く取りながらもう一発アワセ。かすかな生命反応感じる。


来た!


さらにラインスラッグを取りながら、グッ!グッ!とに2回追いアワセを叩き込む。ここで完全にラインスラッグが無くなり、ロッドを通してとてつもない重量感が伝わってきた!


でかい!!これはでかい!!!!


相手は必死で下流に降ろうと底でもがいているが、ここで下流に頭を向かせたらまずい、増水の流れに乗り、あの時と同じことになる!




数年前まで通いつめていたエリアで、それこそ雨後の増水時に掛けたモンスターのことを思い出した。

あの時はエキストラヘビーのトラウトロッドに20LBナイロン。ロッドが曲がりきってしまい、ラインの強さを活かすことができず、何も出来ずに下流にジワジワ走られ続けバラシ、ものすごく悔しい思いをした。

あれから丁度まる3年、考えに考え抜き、今は20LBナイロンをフルで活かせるロッドを手にしている。



迷いは無かった!絶対に下流には行かせない!!



リールのドラグはフルロックだが、一世代古いが故に万一ドラグが滑り出すと止まらなくなるので、さらにスプールを親指でグッと押さえ、ライン切れるなよ~と、ロッドを立てて耐える。

意外にも相手はあっさり諦めて、頭を上流に向け、底に張り付きながらゆっくりと上流に上がったきた。


まだまだロッドから伝わるとてつもない重量感に、かなりの興奮状態であったが、イトウ狙いの前日は、必ず寝る前に毎回メーターオーバーを獲るイメージトレーニングをしていた。体は自然に動いた。


ここで無理矢理寄せに入っては、相手を無駄に暴れさせることになり、バラス確率が上がってしまう。

相手の癇に触らないギリギリのテンションを掛け、魚に同調するようにラインを巻き取っていく。ちょっと心配で地味に追いアワセも軽く入れたりする。フッキングは大丈夫そうだ。

相手が自分の前を越えた、そのままさらに上流へ向かう。ゆっくりと一度浮かせにかかる。


でかい!!!!


カヌーのすぐ横で、魚体が見えるとその大きさに圧倒された。 恐怖を感じ、一度潜らせた。

足が震えてきた。見えるまで、控えめに80は超えてるべ、とか言って必死に自分を落ち着かせようとしたが、やっぱりとてつもなくでかかった。

ルアーが丸呑みでまったく見えなかった。ここで大暴れされたら歯でラインがやられる!と思い、ドラグを緩めハンドドラグで柔軟に対応することにした。

幸い、自分で選びぬいたロッドもまだ余力を残し、イメージどおりに相手の動きに柔軟に対応してくれている。

ここですぐに水面から顔が持ち上がるまで浮かせてしまうと、大暴れするに違いない。カヌー横で、浮かせたり、潜らせたり、を繰り返し体力の消耗を促す。


メーターいってる。


過去にメーターを見てきているキーさんが言い、さらに緊張が増す。


掬える?


キーさんの言葉に、自分で掬いたい、そのために今まで頑張ってきたんだから、と答える。



自身の夢であるホーム河川でのメーターは何としてでも自分でランディングしなければならなかった。それじゃないと自分自身が納得出来なかった。


そのために今まで自分で掛けた魚は友人の好意を無下にしてまで、ほぼすべて自分で掬い、他人の大物まで掬いに走り、練習してきた。

だが、いざ目の前で泳いでいる相手を見ると、内径約60センチのネットに入るのか?と不安が大きくなる。

でも今回ラッキーだったのは、ルアーを丸呑みしていることだった。

これならネットにフックが絡まることは無い、最悪、無理矢理押し込めることができる。男は度胸!一発で決める!とネットを左手に持つ。

そろそろだろ。と水面まで浮かして止めてみる。そのまま下流に下げていくと、一瞬魚体が横になる。

いける!!ここで決めなきゃ、一発で決めなきゃ、絶対に大暴れしてバラス確立が上がる!!

頭からネットを差込み、頭が入ったところでネットを下流にグッと動かして体を入れる。



そこには、釣りはじめてから二十数年、ずっと夢だったホーム河川でのメーターオーバーがなんとも窮屈な体勢でネットに収まっていた。







夢の果て 最終章(夢の果て編)へ続く・・・


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